パワハラ被害に遭っている方に、ぜひ身に付けてほしい自己主張法があります。「アサーション」と呼ばれるものです。
実用性を重んじるアメリカ発祥の自己主張法であり、差別撤廃や、人権回復運動の中で広まってきたものです。そのため、パワハラ被害者のように理不尽に虐げられている人にこそ、必要な自己表現スキルだと、私は思っています。
【1】アサーションとは何か
アサーションは、自分も相手も尊重した自己表現の方法です。
自分も相手も尊重する自己主張とは、自分にも相手にも、我慢を強要しない自己主張ということでもあります。
パワハラ被害者にとって、特に大切となるのが「自分が我慢しない」というところです。パワハラ被害を受けている人の多くは、組織や加害者に対して、パワハラ行為を止めるように主張していません。自分が我慢してしまっているのです。これはアサーションでは「非主張的」な自己表現と言います。
一方で、加害者は「攻撃的」な自己表現をしています。
加害者が「攻撃的」な自己主張をし、被害者が「非主張的」であれば、その関係はどんどん強く固定化されることになります。
【2】アサーティブな自己表現とはどのようなものか
一方で、アサーションとは、自分も他人も尊重する自己表現です。「非主張的」となり自分が我慢するのではなく、「攻撃的」となり相手を我慢させるのでもない自己主張法です。
それは、たとえば次のような自己主張の仕方です。
- 他人から中傷を受けたとき、「それは事実に基づかない発言のため、驚き、また傷つきました。訂正していただけないでしょうか。」と主張する。
- パワハラ加害者に対して、「そのような言い方をされると悲しいです。訂正していただけませんか?」と主張する。
- 「決めつけた言い方をされると、腹が立ちます。別の言い方をしてください。」と主張する。
自分が主張したいことを主張しながらも、攻撃的ではない自己主張をするのです。
【3】アサーションの基本は、事実を述べること
アサーションの基本は、”事実を述べること”です。
この事実には2つあります。1つは客観的な事実、もう1つは主観的な事実です。客観的にどのような事実があったかを述べることと、どのような気持ちになったかを述べることです。たとえば、「先ほどあなたは、私に対して『無能だ』と言いましたが(客観)、それを聞いて私はとても腹が立ちました。(主観)」というような言い方が、アサーティブなものです。
【4】事実は反論しにくい
客観的な事実、主観的な事実を述べることのよい点は、相手方が反論をしにくいことです。
事実に対して反論をするのは、簡単ではありません。「太陽は東から上ります。」という主張に対して、反論するのは困難です。同様に、「悲しいです」という主張に対して、反論するのも困難です。客観的であれ、主観的であれ、”事実”は反論がしにくいものなのです。
相手方が反論をしにくい形式の主張ですので、相手方からの反論に対して恐怖心を持ちにくいのです。たとえば、「遅れそうなときは先に連絡をください。」と言うのは棘が立ちそうで難しくても、「とても言いにくいのですが(主観)、5分の遅刻ですね(客観)。次からは、遅れそうなときは先に連絡をいただきたいです(主観)」という形式なら、言いやすくなります。
【5】アサーションに関する権利や、哲学、型がある。
アサーションは、とても役立つ自己主張方法です。また、アサーションの根本にはしっかりとした哲学・理論があり、さらに技術的にもさまざまな型(モデル)があります。
しかし、最初から型を学ぶよりも”客観的事実、または主観的を述べる”という基本を練習したほうが、実践で使いやすくなると私は考えています。
もし、深く学びたい方はまず次の書籍をお勧めします。
http://amzn.to/2sE7N9k
その上で、アサーションは技術ですので、やはり実践練習を繰り返していくことになります。
簡単に身につけられる技術ではありませんが、加害者に対して主張をしていくとき、とても役立つ技術です。
もし興味があれば、ぜひ取り組んでみてください。
【6】アサーティブな表現だからこそ、仲間を募れる(平成29年7月21日追記)
私は、加害者が暴言を吐いてきたら、暴言で返してもよいと思っています。
相手が誰であろうと、人と人は対等な立場です。ですから、他人が自分にすることは、自分がその他人にしてもよいはずだと、私は考えています。
しかし、それでもアサーティブな表現方法を使えるなら、それを使った方がよいとは思います。
アサーティブな自己表現をするほうが、味方を作りやすいからです。ぞんざいな言葉ではなくて、丁寧に、かつ毅然と言い返すほうが、信頼を得やすいからです。
あなたがアサーティブであればあるほど、仲間を募りやすくなります。
ですから、仲間を得たいと思っている場合は、アサーティブな表現を心掛けましょう。
目次へ戻る↓