パワハラにおいて、組織が加害者にどのように対応するかが、とても大切です。
加害者への働きかけを放置するのは論外ですが、もっとも一般的な対応はこれです。
つまり、「あの人に何を言っても変わらない」と言って、放置するのです。
Kyle Pearce via Compfight
【1】カウンセリングを受けるべきは誰か
パワハラについては、現在、被害者が、自己負担でカウンセリングを受けています。
しかし本来は、加害者がカウンセリング・コーチングを受けるべきです。
これは、4、5歳の子供に、「バカかお前、レストランでは静かにしろ!」と怒鳴っている父親が、カウンセリングを受けるべきなのと同じ理由です。
大人として不適切な行動を取っている人にこそ、働きかけが必要となります。
【2】組織の対応力不足が、パワハラを悪化させる
パワハラ加害者を、3ヶ月間、私に預けてくれるなら、加害行為をしない人にする自信はあります。
しかし、多くの場合、会社はパワハラにどうやって対応してよいのか知りませんし、加害者に対応する技術も持っていません。
世界中のどこでもいじめがあります。ですから、パワハラはどこでも起きうるものです。
しかし、組織がそれに対応する技術を持っていないために、被害者だけが犠牲になります。加害行為が放置され、被害者がその場にいられなくなって退職することになります。
これは組織にとっては訴訟リスクとなるだけでなく、その職場の心理的安全性が決定的に崩されることになるため生産性も下がることになります。
【3】事実認定を重視しすぎる組織対応
パワハラの相談があったとき、組織は往々にして事実認定を大切にしようとします。「何が起きたか」を重視しすぎるのです。
しかし、より大切なことは「人間関係の問題が生じている」という事実です。
そして、組織が解決するべきは、そこの「人間関係のもつれ」です。
ですから、仮に人間関係のもつれが解消できるのであれば、どちらが真実を言っているかは、それほど大切ではありません。
そもそもがパワハラは「言った」「言わない」の水掛け論になりやすいのです。
それなのに会社は、明確にパワハラだと認めない限りは、加害者への対応をしません。
しつこいかもしれませんが、パワハラだという訴えがある以上は、何かしらの人間関係のトラブルがそこにあるのは間違いないのです。
パワハラが事実として認められなくても、会社としてはそこに対応するべきなのです。
【4】事実認定は目的ではない
組織は事実認定を重視しすぎています。
しかし、事実認定をする目的は、”人間関係のもつれ”や、”職場環境を改善するため”です。
逆にいえば、ここが解決されれば事実認定は重要ではありません。
また、ここが解決されていないなら、どれだけ精密に事実認定をしても意味がありません。
もしあなたが、ハラスメント担当者であるならば、この点を重視するように注意してください。
そして、あなたが被害を訴えるときは、少なくとも人間関係で大きなトラブルが生じていることを踏まえて、何かしらの対応をしてくれるように依頼をしましょう。
手段の目的化は、パワハラにおいては致命的な損失となります。
それは被害者にとって、組織にとって、ひいては社会にとっての損失です。
常に目的を意識し続けるように、注意しましょう。