私のゴールの1つは、パワハラがない社会を作ることです。
現段階でもこのゴールの達成方法は分かりません。
しかし、パワハラのない家族を作ることができ、パワハラのないグループを作ることができ、パワハラのないクラスを作ることができます。そして、現段階でもパワハラのない職場は数多く存在します。ですから、パワハラがない社会を作ることは不可能ではありません。
また『GIVE&TAKE 「与える人」こそ成功する時代』の中で、「ギバー(与える人)」が一定割合を超えると「テイカー(「取る人」)も「ギバー(与える人)」のような振る舞いをすることが示されています。テイカーは自己利益を中心として動きますが、社会全体の大多数が他者利益を中心に動くことで、”他者利益を中心に動いたほうが自分にとって利益となる”という状況が生まれるのです。
同じことがパワハラでも起こりえます。つまり、互いの人格をたたえ合う文化が一度できてしまえば、人格を乏(とぼ)しめる行為をすることの不利益が大きくなるため、そういうことはしなくなり得るのです。
誰もがお互いを現状よりも高く評価し合う文化ができたら、どれだけ素晴らしいだろうかと思います。何かうまくいったら「あなたらしい」と言い、うまくいかなかったたら「あなたらしくない」と言い合う社会ができたら、私たちは安心して、成長のための行動を起こし続けられるでしょう。
そして、そのような社会ができれば、当然にそこにはパワハラなどありません。そのような社会においてはパワハラは存在しようがないのです。
しかし、そのような社会を作るためにはさまざまなハードルがあります。まず、セルフイメージの重要性について認識を広める必要があるでしょう。そして、セルフイメージを高め合う技術についても、広める必要があります。さらに、その技術が効果的である根拠なども示していく必要があります。まだまだ超えるべきハードルは多く、そしてその達成のためにはまだまだ時間が掛かります。
ただ、現時点においてセルフイメージを高めるための体系的な技術が存在します。それが「コーチング」です。コーチングを身に付けることで、他人のセルフイメージを効果的に高めることができるようになります。
コーチングはもともとはスポーツなどで発展した心理技術ですが、その中心にあるのはセルフイメージを高める技術です。セルフイメージを高めることによって、それにふさわしい行動を取るようになる。そのようにして結果を出していくと考えるのがコーチングです。
しかし、コーチングの技術はまだまだ広まっておらず、「コーチング」という言葉自体もまだまだ認知されていません。コーチングを知っている人がいても、ただ「傾聴」や「質問」の技術だと思っている人も多くいます。セルフイメージを中心においた心理技術であり、知識体系であると知っている人は少ないのです。そのため、コーチングについても普及活動をしていく必要があるでしょう。
この普及活動が功を奏して、セルフイメージを高める働きかけをすることが私たちにとって当然のこととなれば、いつかはクリティカル・マスを超えるでしょう。そうしたとき、他人の人格を攻撃する「パワハラ」はこの世から消えるはずです。
他人のセルフイメージを引き上げる働きかけをするというのは、それほど難しいことではありません。ただ、現状の私たちには慣れていないことではありますが、「他人の欲するところを施す」という黄金律に基づいた倫理的な行動でもあります。
このような倫理的でもある、「他人のセルフイメージを高める働きかけ」が当たり前の世界は決して遠くないと思っています。仕事にやりがいを求める世代が育ってきているのは、このように「いい人」が増えてきている証拠だと思っています。
パワハラがない社会を作るのは、決して不可能ではありません。それは確実に近づいてきています。もちろん、まだまだその兆候が見えるというレベルにすぎませんが、近づいてきているのは確かです。
そして、その実現を早めることができるのは、私たちしかいません。もしあなたもそのような社会を求めているのでしたら、ぜひ何か一歩でもよいので行動に移していただけたらと思っています。