行政書士・プロフェッショナルコーチの三國雅洋です。
今回は、法律編「パワハラにより、即日退職できるのか」について、解説したいと思います。
先に結論を書けば、「権利はないが、有給休暇を利用すれば即日退職ができる」となります。
【1】即日退職する権利はあるのか
法律上は、即日退職する権利はありません。
期間の定めのない契約の場合は、原則として、2週間以上前に予告をしなければなりません。
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
期間の定めがある場合は、基本的にその期間中は働く義務があります。
「期間の定めがある」というのは、「平成〇年〇月○日限り」のように労働契約の機関がある場合です。「期間の定めがない」というのは前記の定めがない場合です。期間を定めていない場合全般を含みます。
労働契約を締結するときに、期間を定める場合と、期間を定めない場合があります。期間を定める場合については契約社員やパートタイム労働者に、期間を定めない場合については長期雇用を前提とする正社員に、それぞれ多く見られます。
『知って役立つ労働法 -働くときに必要な基礎知識-』 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudouzenpan/index.html
このいずれの契約形態についても、当日退職はできないのが原則です。
また多くの会社で、退職に関する就業規則を定めています。これがある場合は、就業規則の定めにも従う必要があります。
(会社の就業規則に退職手続きが定められている場合はそれに従って
退職の申し出をする必要があります)『知って役立つ労働法 -働くときに必要な基礎知識-』 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudouzenpan/index.html
【2】有給休暇を使って、残り日数を過ごす。
しかし、残り日数を有給を使って消化できれば、そのままの退職は可能となります。
厚生労働省の東京労働局に、次のような相談と回答が書かれています。
退職間際の有給休暇の取得は、拒めないのです。
Q3.退職間際の労働者から、残った年休を退職日までの勤務日に充てたいといわれたら、拒むことはできませんか?
年休は労働者の権利ですから退職間際の年休の申請に対して拒むことはできません。
実際上、退職前の業務の引継ぎなど必要がある場合は、退職日を遅らせてもらうなど、退職する労働者と話し合ったほうがよいでしょう。https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/yokuaru_goshitsumon/nenjiyukyu/q3.html
就業規則の定めがなく、あなたが「期間の定めのない」契約を結んでおり、有給休暇が2週間分以上ある場合は事実上の即日退職が可能となります。
この場合、2週間を経過した時点で、法的に適法に退職をしたことになります。
就業規則で「1ヶ月前までに申し出なければならない」とある場合で、有給休暇が1ヶ月分以上ある場合も同様です。
これらの場合は、損害賠償請求を受けることは、理論上はありません。不法行為や債務不履行などを法的根拠として損害賠償請求をする場合、「違法性」という要件が必要となるからです。
適法に退職している以上、違法性はありません。
そのため、理論上は損害賠償請求をされる恐れはありません。
【3】労働局から指導をしてもらう。
では、有給もない場合はどうすればよいのでしょうか。
期間の定めがある場合でも、やむを得ない自由があれば、即日退職はできます。
パワハラ被害は、このやむを得ない事由に当たると言われます。
ここから類推されて、期間の定めがない場合においても、やむを得ない事由により即日退職できると主張される場合もあります。
しかし、現実的に考えた場合は、労働局に相談に行くのが最も適切で安全でしょう。
そして、パワハラの窮状を訴えて、指導を依頼して、合意解約を求めるのです。
【4】合意解約なら、即日退職も当然に可能
合意解約なら、当然に即日に退職ができます。
ですから、合意解約がもっとも安全な退職の仕方です。
労働局から直接指導をしてもらえなくても、労働局に相談に言ったことを伝えれば、ほとんどの企業は、合意解約を認めるはずです。
パワハラをしたり、放置したりする会社の行動原理は自社の利益です。言い換えれば、自社が損をしないこと。
”労働局を利用する人を内部にいては危険”と、自己防衛に走りますから、通常は即日退職を認めてきます。
ですから、最初は有給休暇を、それができないなら労働局に助力を求めましょう。
この2つで、ほとんどの場合は、問題なく退職できるはずですよ。