文部科学省のHPに、『時間外勤務に関する法令上の根拠』が書かれています。
上記のHPは、とても理解しやすいですので、
ご一読いただくのがよいでしょう。
これによると、
公立学校の教員に対して、時間外勤務を命令できる場合は、
4つの場合しかありません。
- 生徒の実習
- 学校行事
- 職員会議
- 非常災害、児童生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合等
【1】時間外で部活動顧問業務を命じることはできない。
先ほどの4つは、限定列挙です。
つまりは、それ以外での時間外勤務を命じることはできません。
ですから、時間外の、顧問業務を求めることは法的根拠がありません。
公立教員は、公務員であり、行政という国家権力の一部です。
行政は、法的根拠がないことを、してはいけないのが原則です。
ですから、公立教員に対して、
時間外勤務を求めるのは違法であるさえと言えます。
【2】命じることができないから、パワハラで強制する。
厚労省は、パワハラを次のように定義しています。
《職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう》
たとえば、教頭が、教員に顧問業務を時間外もするようにと言うことは、
同じ職場で働く者(教頭)が、同じ職場で働く者(教員)に対して、
職務上の地位(教頭の地位)や人間関係(他の教員が困る)などの職場内での優位性を背景に、
業務の適正な範囲を超えて(顧問業務での時間外労働を命ずることはできない)、
職場環境を悪化させる(時間外労働の日常化)行為です。
ですから、厚労省のパワハラに該当する行為と言えるでしょう。
法的に命じることができないからこそ、
事実上の圧力を使って、
時間外労働を強要するわけです。
教育者にあるまじき行為と、
言わざるを得ません。
【3】教育委員会のパワハラ定義は別物
ただし、教育委員会が、
パワハラだとは認めない可能性はあります。
なぜなら、先ほどの定義は厚労省のものだからです。
公立学校の教員の場合、パワハラの相談先は、
恐ろしいことに教育委員会です。
教育委員会が相談先である以上、
教育委員会が何をパワハラだと判定するかが大切ですが、
すべての教育委員会が定義を出しているわけではありません。
そして、各自治体に教育委員会があり、
統一的な監督機関もありませんから、
統一的な定義もありません。
各自が、独自にパワハラの定義をしているようです。
https://www.pref.nagano.lg.jp/kyoiku/kyoiku/kyoshokuin/documents/240131powerharassment.pdf
つまり、教育委員会は、
私達の定義ではパワハラには当たりませんと、
主張できる可能性があるわけです。
【4】厚労省の定義を無視する必要性があるか。
しかし、
各都道府県、各市町村に教育委員会があるとしても、
厚労省の定義を無視して、
独自にパワハラの定義を定める理由がありません。
厚労省の定義は、
「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」と
いう専門家のグループが出したものです。
労働問題の専門家が集まり、定義したものであり、
無視する必要性がありません。
少なくとも、一般社会的には、
この定義に該当するものはパワハラだとされますし、
少なくとも教育委員会以外の行政は、
パワハラに該当すると認めるものです。
もし、この厚労省の定義を無視してまで
独自にパワハラの定義を作ろうとするならば、
それこそ、社会と教育委員会がズレている証拠にもなりかねません。
【5】生徒のためにも、時間外労働はしないで
私には姪がいますが、
中学生で毎日毎日、
部活で帰宅も6時以降です。
毎週土曜日も部活です。
長期の休みも部活です。
子ども食堂というものに参加して、
中学生の宿題を見ることもありますが、
”部活で疲れていて、宿題ができない”と言っています。
教員の方々にとっても、生徒にとってもおかしい。
教員の方々にとって時間外労働は、
生徒にとっても時間外労働であることを、
ぜひ心にとめておいていただき、
どうか部活動顧問の強要というパワハラに、
立ち向かっていただければと思います。