私は、バリュー・プロポジションというものを大切にします。
バリュー・プロポジションとは、次の3つを満たすものです。
- 自社が提供できる価値
- 顧客が望んでいる価値
- 競合他社が提供できない価値
ただ、この場合の価値というのは、顧客にとっての価値です。
顧客にとって価値あるもののうち、
自社が提供できて、競合他社が提供できないものを言います。
自社が価値あるものだと感じるものではありません。
顧客にとっての価値を考えることが大切です。
価値は、相対的に立ち現れるからです。
【1】西條剛央先生の、「価値の原理」
西條先生は、「価値の原理」を、次のように定義されています。
《「すべての価値は、欲望や関心、目的といったことと相関的に(応じて)立ち現れる」》
《ここであらためて価値を定義すれば、「価値」とは「欲望や関心、目的に応じて(相関的に)立ち現れる良し悪しに関する意味」ということになる。》
(西條剛央 『構造構成的組織行動論の構想― 人はなぜ不合理な行動をするのか? ―』から引用)
https://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/32706/1/WasedaKokusaiKeieiKenkyu_42_Saijo.pdf)
自社にとって価値あるものであっても、
それが必ずしも顧客にとって価値あるものとは限りません。
同時に、顧客にとって価値あるものでも、
自社がそれに価値を見出していない場合もあるわけです。
【2】バリュー・プロポジションの考え方
「価値の原理」を踏まえて、
バリュー・プロポジションを考えてみましょう。
もし、上記の3つを満たすならば、
顧客はそれに価値を見出しており、
かつ、あなたから購入するしかないのです。
顧客は、自分の「欲望・関心・目的」を満たすために、
あなたから製品・サービスを購入するしかないのですから、
あなたの製品・サービスの価値は、最大限に高まるのです。
【3】顧客の「欲望・関心・目的」を考えることの重要性
事業の目的は、ドラッカーが言うとおり「顧客の創造」です。
そのためには、顧客に価値を提供する必要があります。
そして、顧客が価値を見出すものは、顧客の「欲望・関心・目的」に適うものです。
では、どうすれば、顧客の「欲望・関心・目的」を把握できるのでしょうか。
これに役立つの「契機相関性」という考え方です。
【4】関心は、契機(きっかけ)から生まれる。
「欲望・関心・目的」は、契機(きっかけ)から生まれます。(「契機相関性」 西條剛央)
顧客は何かしらの契機(きっかけ)に応じて、関心を持ち、その関心に応じて価値を見出します。
3月14日はホワイトデーですが、これがきっかけで普段は意識しないマシュマロに関心が生じて、そこからマシュマロに価値を見出すようになります。
パワハラ被害を受けたことがきっかけで、その対処法に関心が生まれて、その対処法が書かれている記事やYoutubeに価値を見出すようになります。
このように、顧客は何かしらの契機(きっかけ)によって関心が生じ、その関心に応じて価値を見出しています。
だからこそ、価値提供をするときには、顧客の契機(きっかけ)を正確に把握することが重要となるのです。
【5】価値が見出されていないなら、状況把握を間違えている
顧客にとって価値あるものとは、欲望・関心・目的を満たすものです。
そして、その欲望・関心・目的は、契機(きっかけ)によって生じます。
そのため、もし顧客が価値を見出してくれないのだとしたら、そこに関心が生じていないということです。さらに言うと、その関心を生じさせる契機(きっかけ)がないということです。
つまりは、顧客の状況把握が間違っているということになります。顧客がどのような体験をしているのかを理解できていない、または、その体験からどのような欲望・関心・目的が生じているのかを理解できていないということになります。
顧客の具体的な経験を知れば知るほど、そこから生じる欲望・関心・目的は明確に分かるようになります。よって、もし価値を見出されていないなら、契機(きっかけ)の状況把握が間違っていると思ってよいでしょう。
【6】高いゴールが必要
反対から言えば、顧客の契機、欲望・関心・目的を把握さえすれば、価値を作り出すことができるということです。
詐欺は、この「契機(きっかけ)」→「欲望・関心・目的」→「価値」という流れを、利用しています。たとえば、「還付金がある」という言葉をきっかけにして、金銭への欲望を生じさせ、そこから詐欺グループの言う虚偽の手続きについて価値を生じさせています。偽装請負などをさせる会社なども「正社員募集」という広告をきっかけに集まった人に対して「正社員は決定したので、請負契約ならできる」と伝えて関心を生じさせ、実質的には雇用契約であるのに請負契約を結ばせます。もともとなかった欲望・関心・目的を、契機を作り出すことによって生み出しているのです。
だからこそ、私達には高いゴールが必要です。
あなたの目的が「お金儲け」だけなら、
あなたは顧客の「欲望・関心・目的」を、悪用するでしょう。
あなたの目的が「社会貢献」なら、
あなたは顧客の「欲望・関心・目的」に沿いながら、
あなたの製品・サービスを勧めるでしょう。
最終的には、
あなたが顧客をどこに連れて行きたいかが
やはり大切となります。
顧客の「欲望・関心・目的」を無視して、事業をすることはできません。
しかし、顧客の「欲望・関心・目的」を悪用してもいけません。
顧客の「欲望・関心・目的」を高いレベルで叶えられるような手伝いをしてください。
パワハラで辛い思いをされたあなたなら、
きっとできるはずです。