パワハラ加害者、会社への働きかけの1つとして、内容証明郵便を勧める方がいます。
たしかに、内容証明郵便という手段を知っていることは大切です。
ですが、本当に内容証明郵便は役立つものなのでしょうか?
行政書士として、パワハラ問題における内容証明郵便の限界について、書きたいと思います。
【1】内容証明郵便とは何か?
まず、内容証明郵便について、簡単に説明します。
これは「誰が、誰に、いつ、どんな内容の郵便を送ったのか」を、日本郵便(株)が証明してくれるサービスです。
いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたかということを、差出人が作成した謄本によって当社が証明する制度です。
当社が証明するものは内容文書の存在であり、文書の内容が真実であるかどうかを証明するものではありません。
内容文書とは、受取人へ送達する文書をいいます。
謄本とは、内容文書を謄写した書面をいい、差出人及び差出郵便局において保管するものです。https://www.post.japanpost.jp/service/fuka_service/syomei/
【2】パワハラの予防・解決にどのように役立つのか
内容証明郵便というのは、上記のようなサービスです。
それ以上のものではありません。
では、この内容証明郵便が、パワハラの予防・解決にどのように役立つのでしょうか?
一般的には、次のように説明されます。
たとえば、内容証明郵便で、加害者、会社に対してパワハラ行為が行われている事実を上げて、その行為の中止または改善を求めたとします。
すると、少なくともあなたが、パワハラ行為だと、加害者、会社に対して、主張した事実が証明可能になります。
「パワハラなので、中止してください」と相手に伝えたことになるのです。
その上で、相手方が同じ行動を続けてきたら、それは故意の嫌がらせであることの立証が、しやすくなります。
ですから、加害者としてもパワハラ行為を続けにくくなりますし、会社としても放置するわけにはいかなくなるのです。
【3】内容証明郵便は、諸刃の剣
たしかに、上記のような、心理的効果を内容証明郵便は持っています。
しかし、内容証明郵便を送るということは、基本的には法的に争う姿勢を明らかにしたことと同じです。
内容証明郵便の多くには「法的手段も辞さない所存ですので、ご了承ください」のような文言が罹れます。
これに象徴されるように、内容証明郵便は法的紛争を始める宣戦布告と同じです。
ですから、内容証明郵便を受け取った人は通常、弁護士に相談に行き、弁護士をつけることになります。
つまり、加害者、会社との直接的な交渉は不可能となり、金銭的解決以外の解決はほぼないようになります。
なぜなら、民事での法的解決というのは、結局のところ金銭的解決だからです。
【4】内容証明郵便が役立つ場面は、かなり限られている
あなたが加害者に対して「パワハラ行為を中止してほしい」と伝えた証拠を作りたいなら、ボイスレコーダーで十分です。
わざわざ、内容証明郵便を送る必要はありません。
会社に対して伝えたことについても、ボイスレコーダーで十分に足ります。
パワハラ問題を短期間で解決したい場合、内容証明郵便が役立つ場面はかなり限定的なのです。
それを踏まえた上で、冷静に判断して出すようにしましょう。
ただ、一度出すと決められたなら、全力でサポートします。
いつでもお声をおかけください。